子育てを楽しみ、いきいきと働ける社会を目指して。
今回は、子育て真っ最中のママたちがいきいきと働けるように、アウトソーシング事業を展開されている 株式会社ケイリーパートナーズのみなさんにお話を伺いました。
- 代表取締役CEO 三部 香奈さん
- 代表取締役COO 鷲谷 恭子さん
- 取締役CFO 千原 伴子さん
本日は、子育てをしながらお仕事をされている女性のみなさんの、ご希望やご不満などを聞かせていただき、私たちがこれから取り組むべきことなどを考えさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
私たちケイリーパートナーズは、〝誰もが自分らしい調和で働き、社会とつながっている未来をつくる〟というミッションのもと、2019年の10月に設立した会社でして、地域企業のみなさまの事業成長を後押しするアウトソーシング事業を展開しています。
働いているメンバーはすべて女性です。約9割が小学生以下の子どもを育てている、子育て真っ最中の母親たちですので、働ける時間であったり、環境にはさまざまな制約がありますので、ワークシェアリング、チームプレイで仕事を進めています。
1日2時間から働けますし、子連れで出勤ができたり、在宅勤務も可能にするなど、自由度の高い働き方を大切にしながら、ITもしっかり活用して仕事に取り組んでいます。
最初は経理事務やデータ入力といった、いわゆるバックオフィスの仕事からスタートしたのですが、女性目線を生かしてSNSなどの広報の支援ですとか、企業のお片づけといった新しいサービスも展開しながら日々奮闘しております。
私たちの医療という世界も、約8割が女性なんです。ですから女性が多様な働き方ができるようにと思ってはいるのですが、なかなか難しいところもあるんですよね。
弊社は、ほとんどが子育て世代だったり、同じ経験をしてきた者なので、理解があるというところが大きいと思います。お互い様という気持ちがあるので、とても働きやすいと思います。 あまり理解のない環境の中で、自分だけが何回も子育てで休んだということがあると、どうしても負い目があって、仕事よりも人間関係が大変で、難しいのではないでしょうか。
既存の企業さんでも、子育てを応援されている所はたくさんありますし、仕事と子育てを両立させている方もたくさんいらっしゃいます。でも、突然子どもさんが熱を出して迎えに行かなきゃいけない、申し訳ありませんと言って行かなきゃいけないというのがあるんですね。一般的な企業だと、多様な方がいらっしゃるから、子育てへの理解のレベルもさまざまで、時には女性が自分を犠牲にしてしまうということもあるんです。
私たちがケイリーパートナーズを新たに立ち上げたのは、実証実験的な感じもありまして、とことん子育て中のママを贔屓するというか、ママしかいない、全員が同じ立場であれば、お互いに理解し、快く支え合えますよね。そういう環境を整えられたのは、新しく立ち上げた会社だからこそと思います。誰もが調和のとれた働き方ができる、それがケイリーパートナーズの特徴だと思っております。
会社を始めた時は、「本当にそんな働き方で事業が成り立つの?」という視線を浴びました。それでも実績をつくっていくしかないという思いで取り組んできて、3年目に入りました。モデルケースと言いますか、私たちの1つの実証実験をご覧になって、「なるほど、ケイリーパートナーズのこういう取り組みであれば、自分たちの会社でも少し取り入れられるのではないか」と、参考にしてくださる企業さまも増えてきました。これからもトライ&エラーで実証実験をしながら、多様な働き方を受け入れるような土壌が、この地域に広がっていくように種まきができればいいなと思っております。
社員は何人くらい、いらっしゃるのですか?
ケイリー(経理)と名前に入っていますが、みなさん資格をお持ちなのですか?
いま、16人の体制でやっております。
それまで全く経理の仕事をやったことがなかったメンバーもいますが、いまでは第一線で活躍しています。
出産する前はバリバリ働いていた方もたくさんいます。たとえば建設現場で現場監督をやっていたようなメンバーもいるんですよ。
経理の経験に関係なく、みんなにチャレンジする機会があると思います。それまでのキャリア、それぞれの強みも生かして、弊社の事業の幅が広がっていったところもあるんです。
私が最近感じていることは、〝子育て〟と〝社会人〟って凄く分かれているな、ということです。「子育てをしながら、社会で働くということをどう思いますか?」とか聞かれることがあるのですが、私は〝子育て〟って、未来の〝社会人〟を育てているんだと思うんです。なので、やっていることは両方つながっていると思うんですね。だから、そこを切り離して考えるのではなくて、世の中で働いているお母さんたちに対して「この女性たちは、未来の社会人たちを育てているんだ」と周囲のみなさんが思ってくださったら、もう少し社会が優しくなるのかなと思います。
良いことをおっしゃいますね。未来の社会人を育てている、まさにそのとおりですね。 うちの病院では、産休中の看護師さんが、休職中も勉強できるような機会を設けたり、子育ての悩みを相談できる場をつくったりしているのですが、それでも子育てとの両立は難しいということでお辞めになってしまう方も残念ながらおられるんです。1回現場を離れてしまうと、もう1回戻るというのは大変なことですよね。今回コロナの時に、潜在看護師さんに戻って欲しいという話がありましたけれども、そう言われてもですね、準備ができてないから難しいのですよ。
社会に復帰する時、世の中って最初の一歩のハードルがずいぶん高いんですよ。たとえば看護師さんの場合でも、2時間でもできることとか、小分けにして、ワークシェアリングというかたちで何か役に立てるようにしたり、在宅でもできることでもいいとか、そういう仕組みをつくることが大事だと思います。
ケイリーパートナーズでは、企業さまからお仕事をいただく際に、働いてるのはこういう人たちですときちんと紹介しますし、だからワークシェアリングをしてるんです、ワークシェアリングをするためには仕事を細かく分けて、それを分担するような仕組みをつくらなければいけないのですとご説明するんです。そうすると「それだったら、うちの会社のこの部分を切り出せるからお願いしようかな」という話になって、企業さまと一緒に仕組みをつくっていくような感じです。
先日、弊社を取材していただいた記事がネットでニュースになったんですよ。そしたら本当にたくさんの方がコメントを寄せてくださったんですね。「2時間から働けるのだったら、私も踏み出せるかな…」とか。そんなチャンスがあるんだったらと前向きになってくださった声も多くて。そういうスモールステップが大事なんですね。最初から100に戻すのではなくて、足し算、足し算で積み上げていける、そんな仕組みが地域に広がっていけばいいなと思います。
私たちは、それを事業として成り立つようにするのが、ワークシェアリングという仕組みだと思っていて、それは子育て中の女性だけでなく、介護をしている方もそうですし、少し身体の自由がきかない方であったり、シニアの方であったり、いろんな方たちが社会とつながる仕組みになり得ると思うんです。
私も、子育てを楽しめるような社会にしていきたいと思っているんです。でも、うちの職員でも1年の予定の産休を6ヵ月で切り上げて、保育園に預けて働き始める人がいます。それは私たちとしては歓迎なんですけれども、理由を聞くと「家でずっと、一人で子どもの面倒を見ていると辛い」と言うのですね。「保育園に預けて働いたほうが、自分の時間も持てるから」と言ってるのを聞いてですね、なんか非常に辛いなと思ったんです。子育ての環境そのものを、もう少し変えていくことで、子育てを楽しめるようにできないかと思うんです。
日本の保育所は非常に預けにくいと思うんですね。母親がフルタイムか、それに近い状態で働いているのが原則となっているんです。私は、そこまで長くは預けたくなくて…。子どものことも見ていたいのですが、働いているあいだだけ、ちょこっと預けられる先というのがないんです。
それは、みなさんが感じていることですか?
そうですね。なかなか融通がきかないとか、自分たちの働き方にマッチしないとか、たくさんのメンバーが言っています。本当に大きな課題だと思います。
とても良いことを聞かせていただきました。 政府や自治体では、待機児童ゼロを実現したとか言ってますけれども、それは預けることが公的に認められている人たちが入れているだけで、細かい所まで手の届いた子育て支援にはなっていない、たとえば2時間だけ働きたいとしても、その時間だけ預けられるという仕組みがないわけですね。
そうなんです。一時預かりという制度もあるんですけど、ほとんど受け入れてくれないんです。
保育のことだけでなく、きっとさまざまな所にそういう問題があると思います。それを見直していくことが、女性たちの挑戦につながり、社会全体の活性化にもプラスになるのではないでしょうか。
間違いないです。
そういう思いを持って、事業をやっていらっしゃるんですね。ぐっと胸に来ました。
ありがとうございます。
私は〝誰もが自分らしく、いきいきと活躍できる地域になるように、自分ができることをやる〟ということを個人的な人生のミッションとして活動しているんですけれども、人というのは本当に多様なんですよね。声を大きく出せる人の声は聞こえてくるんですけれど、声を出せない方って、まだまだいっぱいいらっしゃるのだろうなと思います。たとえば、ヤングケアラーの問題だったりとか、貧困の問題とか。特に子どもって自分から声を出せないと思うので、より細かくていねいに話を聞いて、現実を見て、その人たちのために何ができるかを考えていかなくてはいけないと凄く思っています。
自分でできることはやろうと、私もチャレンジをしているところですが、まったく新しい働き方とか、多様性を認め合える環境をつくろうとすると、労務的な法律の問題とか雇用関係とか、細かい部分なんですけれども会社の思いとマッチしないことがたくさんあるんです。時代は大きく変わっているし、多様性を認め合える社会にしなきゃいけないから、法律とか制度などをちょっとずつ変えていく必要があると思ってるので、そこは星さんの力に期待したいです。
子どもたちが不安なく歳を重ねていけるような、そんな世の中であって欲しいというのが、私のいちばんの願いです。でも、自分がこうしたいと思ったことを実現しようとすると、やはり法律がネックになることが往々にしてあるので、そういったところはぜひ変えていっていただきたいです。
この事業を始めてから、若い学生さんとお話をする機会が増えたのですが、特に女性の場合「自分は結婚するのだろうか」とか「子どもを産むのだろうか」とか、先のことを考えていったときに急に何か「自分の将来にモヤがかかったような気持ちになる」とおっしゃる方が多いんです。
人生ずっと連続ドラマなので、自分にどういう立場の役回りが来るのか、若い頃はまだまだ見えないのだと思いますが、どんな状況になっても、しなやかに自分の人生をデザインできる、そういった環境を整えておいてあげることが、若い世代の少し先を行く大人の責任だと思っています。0なのか100なのか、どちらかではなくて、多様なものを受け入れることができて、みんなが生きやすい所を選びとれるような、そんな時代になっていけばいいなと思います。
いまの制度も、それぞれいろんな思いがあって、つくられたものとは思います。しかし、つくる側の思いと、使う側の思いが、ずれてきてしまっているのだろうなと、非常に強く感じました。
みんなの思いをつなぎ、そして良い方向に変えていくことで、誰もが将来に夢を持って、視界の良い人生を歩いて行ける、そういう社会をぜひ実現させたいと思います。
みなさんのようにいきいきと輝いて、子育てやお仕事をされる方がどんどん増えるように、私も精一杯頑張ります。本日はありがとうございました。